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投稿者: Schu Sugawara <schu@i...> Date: 2004年1月16日(金) 午前5時51分
タイトル: TUP速報243号 路上にて 04年1月16日
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バグダッドから届いた一通のメールが報告する、無名のイラク民間人の偶発的
な死は、日本人外交官の殺害、サダム・フセインの拘束、あるいはヘリ撃墜や
自爆攻撃のように、センセーショナルなニュースにならなくても、対ゲリラ戦
争の現場に化した占領下イラクの実状をリアルに伝えています。
自爆攻撃に脅える兵士たちが、突発事態を前にして、攻撃か否かを確かめる術
も時間的余裕もなく、発砲する……「非戦闘地域」に赴く陸上自衛隊の隊員たち
は、はたして突発事態に遭わなくてすむのだろうかと、どうしても考えてしま
います。
TUP 井上 利男
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『路上にて』
トム・ディスパッチ・サイト 2004年1月11日
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[編集者トム・エンゲルハートによる前書き]
ここに、私の知人であるドクター・デイビッド・ヒルファイカーから届いた記
事を紹介しよう。彼は開戦前のイラクを訪問し、トム・ディスパッチに報告を
寄稿してくれたが、今また、『キリスト者和解チーム』の一員としてバグダッ
ドに戻っている。彼はいわゆる赤ヒゲ(貧困対処医療者)であり、冷静で慎重、
思慮分別を備えた人格者である。バグダッドからのメールで、彼はある偶発事
態を報告し、その事件についての彼の考察を語り、イラクを武力占領しながら、
四面楚歌に苦しむ米兵たちの特異な行為と考え違いの実態を伝える。トム(署
名)
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『元通訳マジン・ジャマー、無名の男の死を語る』
ドクター・デイビッド・ヒルファイカー
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火曜日朝、イラクの旧フセイン政権および新しい統治権力による人権侵害を調
査しているイラク人のNGO『イラク人権機構』を私たちは訪問した。200
3年7月13日、ラザクのアブド・ワハブが射殺された事件について、遺族に
事情聴取したのだが、実際に主として話してくれたのは、当時、イラク人権機
構で活動していたイラク人通訳マジン・ジャマーだった。
7月13日当日、マジンは、新しい検問所を設置した米軍パトロール隊に通訳
として配置されていた。円滑な道路交通の観点から、その検問所は不都合な地
点にあると彼は思った。検問所があるために、通行可能なのは1車線だけであ
り、車が行列を作っていた。
アブド・ワハブは、通常のその道では正常な高速度で白塗りのプジョーを走ら
せていた。渋滞の車列に気づき、衝突を避けようと減速したが、間に合わず、
右に急ハンドルを切った。(なぜ彼は速度を落とさなかったのか、はっきりし
たことは分からない。検問所ができたのを知らなかったのかもしれないし、目
撃者たちはブレーキの不具合だと思ったが、いずれにしろはっきりしたことは
分からない)
検問所から100メートルの地点で、米兵たちの自動小銃が一斉に火を噴いた。
マジンの眼には、事前警告がなされたようには見えなかったが、警告を与える
時間的余裕があったのかどうかもはっきりしない。弾丸を雨アラレと浴びせら
れ、アブド・ワハブは死亡した。別の車のもう一人の男も、流れ弾を眼に受け
て、即死した。
パトロール隊を率いる中尉が車に駆け寄って、降りろと犠牲者に命じた。この
男は死んでいるとマジンは中尉に言った。中尉はアブド・ワハブを車から引っ
張り出し、マジンの話によれば、襟を掴んで、道路を横切って20ないし25
メートルほど引きずっていった。他の兵士たち2名が駆け付け、男の遺体を警
護した。兵士たちは犠牲者を話の種に「笑っていた」とマジンは言った。(後ほ
ど私は、「笑っていた」のか、それとも「笑みを浮かべていた」のかと訊ねたが、
マジンには英語のこの違いがはっきり分からなかったようだ)
「私は、どうして死んだ男に銃を向けているのかと兵士たちに聞きました。イ
ラク人警官が一人、私たちの傍にいましたが、兵士たちに追い払われましたの
で、証人にはなりません。(地元新聞の)記者がいて、カメラを持っていました
が、兵士たちは撮影を許しませんでした。写真なんか撮ろうものなら、撃ち殺
されちゃうよと記者は私に言いました。現場にいる時、記者とお喋りしている
ぶんには、中尉は別に制止しませんでしたが、記者には何も言うなと私に命じ
ました。でも、私は『袖の中に何も残しません』でした」(つまり、あらいざ
らい喋ってしまった)
マジンが知る限りでは、事件が新聞に報じられることはなかった。
アブド・ワハブを道路上に45分間放置したまま、兵士たちは車内を捜索した
が、兵器もなかったし、他にも怪しいものは何も見つからなかった。その間、
マジンは犠牲者のポケットを調べていて、胸ポケットの中から身分証明を見つ
けた。そのカードは銃弾が貫通していて、氏名ははっきり読み取れなかった。
彼はカードを車のダッシュボードの上に置き、全員で車を近くのスポーツクラ
ブへ押して行った。クラブから出てきた人たちのひとりが、後でアブド・ワハ
ブの遺族に教えたのだが、彼らは、兵士たちのひとりが身分証明を車から取り
出し、破り捨てたのを目撃していた。
車内の捜索が終わると、兵士たちはアブド・ワハブの遺体をハムビー戦闘車の
ボンネットに括り付け、米軍基地近くの小さな病院へ運んだ。マジンが(彼が
誰であるか)すでに教えていたのに、兵士たちはこの男の身元は不明であると
病院スタッフに伝えた。
マジンはこの事件で気が動転し、翌日は仕事に行けなかった。その次の日、彼
は事務所に出向いて、その場で辞職してしまった。「彼らはアブド・ワハブを
動物扱いしたのです。正しい行いではありません」
彼が事務所を出る時、別の中尉が彼のところへやって来て、犠牲者は飲酒して
いたと聞いていると言った。彼は呑んでいませんでしたとマジンは中尉に言葉
を返した。(アブド・ワハブには飲酒の習慣がまったくなかったと家族は言っ
た)
家族はアブド・ワハブのドライブ経路をようやくのことで解明し、銃撃された
車まで辿り着いたが、遺体を捜し出すのには、3ヶ月以上も費やした。
マジンが話している間、アブド・ワハブの父と姉は無表情なまま聴きながら座
り、時おり、なにやらアラビア語で口を挟んでいた。だが、義兄であるドク
ター・ムハマドはすごく多弁であり、事件に興奮し、私たちに話して聞かせた
くて堪らない様子だった。彼が家に戻った時、見聞きした事件の経緯を家族に
話すこと以外には何もできなかったのである。
ドクター・ムハマドは整形外科医であり、そのうち分かったのだが、ジェシ
カ・リンチが彼の小さな病院へ運び込まれた折に、最初に治療にあたった医師
たちのひとりだった。
「彼女は(イラク人の博愛がたっぷり溶け込んでいる)輸血を6リットル受け、
複数の骨折箇所の外科的修復を施されました。私たちが治療しなければ、彼女
は死んでいたでしょう。手当てしたのは、彼女も一人の人間であり、私たちは
たがいに愛さなければならないからです。私の弟はそういう扱いを受けません
でした」
話されていることをじっくり考えて、私はさまざまな思いを抱いた。家族は、
たしかに射殺そのものにも怒っていたが、それ以上に、彼が事後に受けたと疑
いなく思われる扱いに対して怒っていたようだ。アブド・ワハブは徹底して見
下した仕打ちをされたという思いであり、これこそはきわめて明解な屈辱なの
だ。
(この耳で聞いた印象から、確信をもって言えるが、マジンの語り口はゆっく
りであり、明確・慎重で、知る限りの真実を話していた) 私は努めて感情を抑
えて話を聴いていたが、それにしても、本当のところはどうだったのか、完全
には分からなかったのも確かである。
兵士たちが実際にアブド・ワハブを笑い者にしていたとか、彼の身分証明を故
意に破棄したとは私は信じられなかった。兵士たちの心が、感覚が捉える危険
に動転し、次に起こりうる事態を恐れ、人を殺害したことで動揺していたのだ
と信じるほうが、私にはずっと容易だった。マジンの英会話能力が完璧ではな
く、兵士たちの情緒反応――心の動き――を読み間違えたのだと、たやすく信
じることもできた。道路に居合わせた目撃者たちにしても、目にしたことを間
違って解釈したのだと、単純に理解することもできた。実際、兵士たちが故意
に身分証明を破り裂いたと、どうして彼らが知ることができたのか、私には分
からない。
だが、そのような細かなことはさておいても、失業率が60パーセントという
イラクの状況を考えれば――街路を横切って引きずられ、ただちに治療を施さ
れず、ハムビーのボンネットに括り付けられ、身元調査もなされず、家族は事
件を直ちに知ることもできなかった――アブド・ワハブが受けた酷い扱いに、
マジンが激怒して、生活の糧を得る仕事を棒に振ったことこそが重要だった。
私たちは、キリスト者和解チームとして、甚だしい人権侵害事例であり、告発
対象になる可能性があると聞いたので、事情を聴取したのである。私たちは聞
き取りを重ねて、事件をさらに調査するつもりである。
(恐怖に駆られている若い兵士たちが、自分たちに迫ってくる車両を見て、自
爆攻撃を恐れ、射撃し、犠牲者をすばやく車から引っ張り出し、ありうる爆発
を止めようとし、混乱の最中、アラビア人の名前を正しく把握できなかった…
など)誰をも弾劾することなく、事件の経緯を説明することも、なるほど可能
である。
だがこれは――民間人居住地に兵士たちが駐屯し、(自爆攻撃を恐れて)千分の
一秒の瞬時に決断を下さなくてはならず、アラビア語を話せるアメリカ人がい
ないので、意志の疎通もかなわず、占領軍兵士たちと犠牲者遺族との会話もな
い――戦争にまつわる気が滅入る物語なのである。憎悪を醸成し、レジスタン
ス戦士を輩出させるのは、このような偶発事件なのだ。
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On the ground: Mazin Jumaa's Story
By Dr. David Hilfiker, posted January 11, 2004 at TomDispatch
http://www.nationinstitute.org/tomdispatch/index.mhtml?emx=x&pid=1172
Copyright (C) 2004 David Hilfiker
著作権者を代理してトム・エンゲルハートによりTUP配信許諾済み
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翻訳 井上 利男 / TUP
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TUP速報
配信担当 菅原 秀 Schu Sugawara
電子メール: TUP-Bulletin-owner@e...
TUP速報の申し込みは: http://www.egroups.co.jp/group/TUP-Bulletin
*問い合わせが膨大な数になっています。ご返事が書けない場合がありますので、
ご容赦ください。
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